勉強とゲームの両立①

今週のお題「ゲーム」

 

何を書けば良いかわからないので、とりあえず今週のお題について書いてみよう。

 

僕は学習塾を開いているので、ゲームに関する相談は保護者からも生徒からもよく受ける。「うちの子ゲームばかりやって勉強しなくて、だから成績悪いんですが、どう注意したらいいですか?」とか「テスト前でもゲームしちゃうんですけど、どうすればいいですか?」とかという相談だ。

そして僕の答えはいつも決まっている。「ゲームとうまく付きあえないのなら、手放すしかないです」という答えだ。期待されている答えじゃないのはわかっているけど、シンプルにそれ以外にないのだ。お酒とうまく付き合えないアル中の人は酒を買わないしかない、みたいな感覚だ。

 

僕もゲームが大好きだった。

うちは小学校の頃はゲーム禁止だったからプレーできなかったが、中学受験が終わると買ってもらえて。学校から帰ったら父親が帰ってくるまでずっとリビングのテレビを占領してテレビゲームをして、父親が帰ってきたら自分の部屋にこもってゲームボーイをしていた。

世代的にはスト2とかドラクエとかFFとかが流行っていた頃だったが、僕は手先が不器用で、たとえばスト2をやると昇竜拳を打ちたいのに波動拳が出ていく感じだったので、格闘ゲームやレースゲーム系はどうも好きになれなかった。加えて根性が無いのでロールプレイングゲームも、終盤が近づいてきて敵が強くなってくるとレベル上げが面倒になって、友達にエンディングを聞いて、ふーん、そうなるんだ、じゃあもういいや、という感じで中途半端に投げだしていた。逆に好きだったのがシュミレーションゲーム系で、最初の頃はシムシティでいくつもの街を作り、高校生くらいからはダビスタにはまってマイ三冠馬たちを育てていた。うまくいかないこともあったけど、そういうときはリセットボタンを押せば、うまくいくように変えられた。

部活も忙しかったので、普段はほとんど勉強しなかった。出さないと居残りさせられるような宿題は渋々やったけれど、答えを写して提出すればいい宿題は答えを写したし、先生が厳しくチェックしない宿題は完全スルーした。テスト期間中はさすがに勉強時間を増やしたが、昼間に気分転換という名目で何時間かゲームしてしまったり、夜中にゲームに逃げてしまって後悔したことも多かった。ゲームさえしなければもっと良い成績を取れるのに、という思いつつも、自分を正しくコントロールすることなんてできなかった。勉強よりはるかに面白いのだから、家にある限り誘惑に抗えなかった。

 

でも高3になり大学受験が近づいてくると、ゲームする時間がもったいないと感じる気持ちも、ゲームの誘惑に負けてしまう自分への怒りも日を追うごとに強くなってきて、ある日、衝動的に中古屋に手持ちのゲームを売りに行った。お金がもったいないという気持ちもあったが、この衝動に身を任せる方が正しいという直感に従った。そのあと一度、どうしても我慢できなくなって貯金をはたいて買い戻してしまったが、その三日後くらいにまた売りに行った。2万円くらいの無駄遣い。高校生の身にはずいぶん痛い出費だったが、その痛みのおかげでそれからは受験が終わるまでゲームに戻ることはなく、つまらない、つまらない、と思いながら受験勉強を続けて、ぎりぎりの時期に成績を上げることができて何とか志望校に合格できた。

 

長々と自分の経験を書いたけれど、実際世の中には「1日1時間まで」という自ら決めたルールを遵守してゲームとうまく付き合いつつ受験勉強を進められる人なんてごくごく一部で、受験がうまくいった同級生たちや生徒たちは僕と似た経験をしていることが多い。ゲームを売った人だけでなく、衝動的に破壊したという人も多い。ダメだダメだと思いながらもゲームの持つ強い魔力に負け続け、自己嫌悪感に浸り続け、しかし「ある日」がふとやってきて、金銭的な痛みを覚悟した上で強制的にゲームと距離を置くのだ。まさに肉を切らせて骨を断つ的な感じで。

 

この「ある日」がいつやってくるかはわからない。こういうきっかけは、不意に向こうからやってくる恩寵のようなものだから。これを周囲の大人が意図的に作ってしまうと、大体うまく勉強に気持ちをシフトできないまま終わってしまう。歯がゆく感じることも多いけれど、保護者や教師は注意をしつつも強制はせず、子供が自発的に変わるのをひたすら待つしかない。また、もし運悪く「ある日」がやってこず不本意な受験結果に終わったとしても、それがその時点でのその子の実力だったと考えるしかない。結局、運も実力のうちだし、その失敗を本人が受け止めて反省することが、その後の「ある日」につながるわけだから。

 

とはいえ、今の中高生のゲームツールはスマホであることが多いから、昔より「断ち方」が難しい。

僕は「ゲームとうまく付き合う」のはゲームが魅力的すぎて凡人には難しいが、生徒それぞれに合った「断ち方」はあると思っていて、だから自分の塾の生徒にはいくつかの方法を教えて選ばせている。子供が「ゲームを断ちたい」と思った時、方法をたくさん知っていれば、その中から自分に合ったものを選ぶことができ、「ある日」が来た時に「脱皮」できる確率が上がるからだ。

次回はその方法について書いてみたい。